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「ブレーキが勝手に作動」249件

2018年11月30日

自動ブレーキ搭載車で、なぜ事故が相次ぐのか

自動ブレーキは「ぶつからないクルマ」?

モータージャーナリスト 御堀直嗣


 車や人を検知して、事故を未然に防ぐ「衝突被害軽減ブレーキ」(自動ブレーキ)が十分に作動せず、事故に至ったとの報告が2017年の1年間で72件、国土交通省に寄せられていたことがわかった。国内では03年から自動ブレーキを装備した車両が市販され、その後、急速に普及。16年に生産された乗用車の66%(約248万台)に搭載されている。「ぶつからないクルマ」と評されることも多い自動ブレーキ搭載車で、なぜ事故が相次いでいるのか。モータージャーナリストの御堀直嗣氏に解説してもらった。
「ブレーキが勝手に作動」249件



 今年7月、「自動ブレーキ事故72件」の報道があった。2020年に高速道路での自動運転実用化へ向けた開発が進められているさなか、こうした報道は、自動車メーカーも消費者も、自動ブレーキに対する正しい理解と使い方の認識が不可欠であるとの警鐘を鳴らしたと言える。

 国交省によると、昨年にドライバーやメーカーなどから報告のあった自動ブレーキのトラブル情報は計340件に上る。

 安全性の技術的検証を行っている独立行政法人・自動車技術総合機構の交通安全環境研究所が分析したところ、自動ブレーキが十分に作動しなかった例は88件あり、そのうち72件が接触や追突などの事故につながっていた。歩行者がはねられて死亡した事故も1件あった。

 一方で、不必要な場面で自動ブレーキが勝手に作動したという例が249件あり、そのうち10件が予期せぬ急減速・急停止で後続車に追突されるなどしたという。

「自動運転ではない」

 安全に関わる装備や機能は、完成度と信頼性が十分に高められたうえで市販されるべきである。しかし、事故を未然に防ぐことが目的であるため、一刻も早い導入が事故低減につながることにもなる。

 完璧を目指すのはもちろんではあるとしても、現実の交通では不確定要素がつきまとうため、何をもって完璧かという答えを出すのは難しい。また、それをずっと待っていては、新たな技術で回避できたはずの事故を防ぐことができないことにもなりかねない。

 衝突被害軽減ブレーキはすでに量産され、市場に出回っている。ならば、その機能や作動条件をメーカーは正しく伝え、消費者に正しい理解を促すほかない。現在、市販車に搭載されている運転支援機能は、すべて「自動運転ではない」ことを改めて認識し、過信しないよう肝に銘じることも求められる。


時速60キロ以上では衝突回避が難しい


 衝突被害軽減ブレーキのメカニズムはこうだ。

 カメラやセンサーを使い、障害物を発見・認知すると、まず運転者にメーター表示や警告音で注意を促す。それでも危険回避の操作が運転者によって行われない場合、クルマがブレーキを自動的に作動させ、減速し、衝突を回避したり、回避はできなくても衝突時の速度を大幅に下げたりして被害を軽減する。

 重要なのは、「衝突を回避できる速度」と、「回避できず被害を軽減する速度」の条件があることだ。つまり、すべての走行状況で衝突を回避できるわけではない。というのも、高速になればなるほど、遠い先にある交通状況を的確に判断するのは難しい。また、状況認識が不十分な状態でブレーキが作動しては、誤作動となる懸念がある。

 衝突安全性能の評価を行っている自動車事故対策機構が、時速10~60キロの速度域で作動試験を実施。評価結果は★の数で表し、5段階で安全性能を示している。この評価では、高速走行が想定されていないため、時速60キロ以上では衝突を回避できない可能性が高くなる。

 自動車専用道路や高速道路上で時速80~100キロで走行し、運転者が減速などの危険回避操作をしなければ、たとえ衝突被害軽減ブレーキの作動によって速度を落とすことができたとしても、障害物に衝突すると考えたほうがいい。

 一方、交差点などで目の前を歩行者が横断するといった場面では、瞬時にブレーキ操作を行わなければならないため、低速での作動の判定もかなり難しい技術となる。

衝突被害軽減ブレーキが作動しない六つのケース

(画像はイメージ)
(画像はイメージ)
 作動速度とは別に、クルマが走行するすべての状況で衝突被害軽減ブレーキが機能するとは限らない。

 自動車事故対策機構は、次のような状況の場合、衝突被害軽減ブレーキの作動に注意が必要としている。


 【1】夜間や雨天の場合

 【2】窓に汚れがある場合

 【3】ダッシュボード上に置かれたものが窓に反射している場合

 【4】検出装置の前に遮断物がある場合

 【5】精度保持のためのメンテナンスが不足している場合

 【6】歩行者が飛び出してきた場合


 こうした状況は、ドライバーの目にも前方の状況がつかみにくかったり、瞬時に対処しにくかったりして、危険を回避するのが難しい。衝突被害軽減ブレーキという装備にとっても、これと同様であることを示している。


分かりやすい宣伝文句

自転車事故を再現するスタントマン(18年5月、奈良市で)

 国土交通省は衝突被害軽減ブレーキの導入に当たって、当初、クルマが自動で回避してはいけないとする指導をしていた。ところが、スウェーデンのボルボが、海外で衝突を回避するシステムを市販していると申し出たことで、国内においても衝突回避性能を備えた装置を市販することが許可された経緯がある。

 国内で衝突被害を回避できるシステムの市販が許可されるようになると、メーカーは「ぶつからないクルマ?」といった宣伝を行うようになった。それは、衝突被害軽減ブレーキシステムの実態を正確に言い表した言葉ではないが、消費者には分かりやすい宣伝文句だった。

 それゆえに、疑問符「?」はつけられていたものの、衝突被害軽減ブレーキの作動条件が理解されないまま、消費者の期待を一気に高めることになった。

 分かりやすい言葉は大切だ。しかし、クルマは一歩間違えれば、人を死傷させてしまう危険性をはらんでいる。だから、分かりやすいだけでなく、機能の理解を促す言葉遣いが求められる。本来であれば、「衝突被害軽減ブレーキ」を「自動ブレーキ」と言い表すことさえ控えるべきだ。

誤解を生みかねない宣伝

 クルマの特徴や魅力を表現するうえで、誤解を生みかねない宣伝や広報が当たり前のように行われている。

 たとえば、一部改良の「マイナーチェンジ」であるにもかかわらず、多くのクルマで「新型」という表現が使われ、「モデルチェンジ」かのような広報・宣伝がされる。プレス資料を読んでも、フルモデルチェンジなのか、マイナーチェンジであるか判読できず、広報担当者へ問い合わせなければならない。ハイブリッドカーであるにもかかわらず、電気自動車であるかのような表現も散見される。

 こうした消費者を惑わすような表現を、自動車メーカーや輸入業者の広報・宣伝担当者が平気で使うことが、衝突被害軽減ブレーキにおける衝突事故につながっている可能性もないとはいえない。

 経済産業省、国土交通省、日本自動車会議所は、高齢運転者を含むすべての自動車運転者による交通事故の発生防止・被害軽減対策の一環として、運転支援機能を備えた安全運転サポート車の普及啓発を実施している。ここで利用される「サポカー」や「サポカーS」などの愛称は、親近感をもたせようとする意図は理解できるが、消費者に誤解を与えたり、機能以上の期待を抱かせたりしていないだろうか。

 国内の新車販売は、バブル期以降縮小傾向にあり、その中で売り上げを伸ばそうとする販売努力はうなずける。しかし、だからといって、消費者に誤解を与える広報・宣伝をしていいという話にはならない。

 まして、安全にかかわる機能や装備は、メーカーが消費者に正しく伝える責任がある。とにかく売れればいいといった空気が社内にあることが、完成車検査問題や排ガス偽装問題にもつながっていないだろうか。自動車メーカーの一連の問題は、顧客の存在を忘れ、社内への内向き意識で仕事をする空気が蔓延まんえんしていると感じている。


人が運転することが前提


 衝突被害軽減ブレーキを含む現在の運転支援システムは、人が運転することを前提とする「レベル2」の段階にあることも忘れてはならない。

 自動運転の国際基準は、ドライバーが全ての運転操作をする「レベル0」から、全てをシステムが行う「レベル5」まで6段階に分類している。

 「レベル3」は、普段はシステムが運転し、悪天候やスピードを出している時など自動運転プログラムの限界を超えた場合、ドライバーに運転を代わるよう音声などで伝える。

 完全な自動運転と認められるのは、将来の「レベル4~5」になってからとなる。

 現在の衝突被害軽減ブレーキは、常に人が運転していることを前提に、それを補助する「レベル2」であり、危険回避操作も運転者自ら行う。それでも間に合わない状況において補助し、被害を小さくするための機能にとどまる。

 一方で、「レベル2」の運転支援機能は、車間距離を維持しながら前を走るクルマに追従したり、車線を維持したりすることができ、あたかも自動運転が可能になったかのような錯覚を与える。「自動運転技術搭載」などと宣伝する自動車メーカーもあるが、あくまで運転支援であることを忘れてはならない。

 「自動運転」を印象づけるより、運転操作に無駄がなくなり、同乗者が快適で、安心できる運転につながる支援との理解が深まるのが理想だろう。

「レベル3」の実用化に課題

(画像はイメージ)
(画像はイメージ)
 現在の「レベル2」においても、システムに起因する事故が起きている実態が明らかにされた。

 これは、運転者がクルマの支援機能に依存し過ぎた可能性がある。「レベル3」になると、普段はクルマの自動操作に依存して走行できるにもかかわらず、万一の場合には人に運転がゆだねられる。これでは、さらに事故が増える懸念がある。

 「レベル2」の運転支援で長時間走行し続けると、人はクルマへの依存心が高まる。私自身、自分の判断で運転操作をしなければならない場面で、判断や操作が遅れることを実感した経験がある。「レベル3」の自動運転車が実用化されたとき、人に運転がスイッチした場面で、安全に配慮した操作を瞬時にできるかどうか疑問が残る。

 だから、「レベル3」は市販されるべきではなく、現在の「レベル2」から次の段階へ移行するタイミングは「レベル4」以上であるべきだ。

 自動運転というと、世界中のあらゆる道で利用できると考えられがちだが、それでは、自動運転の実用化が遠い未来の話になってしまう。公共交通機関が整備されにくい地域や、限定された区間のみの運用であっても、生活支援の一環として自動運転の部分的な導入は検討されるべきだろう。自動化への柔軟な運用も必要だ。

 また、自動運転の実現には、タイヤのパンクに対する措置(パンク状態でも一定距離を走れるランフラットタイヤの標準装着など)も考慮されるべきである。タイヤがパンクしたら、ハンドル操作もブレーキも効力が落ちる。

 いずれにしても、安全性能や機能について過剰な期待を抱かせる広報・宣伝は慎むべきだ。それでも、実用化に向けて柔軟な運用がなされる際には、その機能を十分に把握できるように、特徴とリスクの理解を促す努力を惜しんではいけない。





引用元の記事はこちら(https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20180731-OYT8T50093.html?from=yhd)


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