2018年12月09日
熊本に食用昆虫の自動販売機現る
バッタにコオロギ、ゲンゴロウ――。熊本市中央区の子飼(こかい)商店街近くに食用昆虫ばかりを提供する自動販売機が登場し話題になっている。同区の自営業、友田敏之さん(34)が「食糧問題に関心を持ってほしい」と通信販売されている食用昆虫を販売。昆虫は国連食糧農業機関(FAO)が将来の食糧危機を解決する栄養源と発表して世界的に注目されており、友田さんは「一度食べればおいしさが分かる」と力説する。
自動販売機は、昆虫のイラストをあしらったおしゃれなデザインで、友田さんが経営するバルーン販売店の横に設置されている。販売されているのは、バッタの詰め合わせ▽幼虫の詰め合わせ▽乾燥ゲンゴロウ▽バッタのチョコレート包み▽コオロギのプロテインバー(抹茶味とチョコ味の2種類)――など。ほとんどを流通価格より安い1点600~1000円で販売しているためもうけはないが、食糧問題に興味を持ってもらうため求めやすい価格設定にした。
友田さんは20代で上京して東京でラッパーとして活動し、社会の格差など世の中の不条理を歌ってきた。しかし、メジャーデビューの夢破れて2012年に熊本に帰郷。生計を立てるため飾り付け用のバルーン販売を手がけて軌道に乗せた。
食糧問題に関心を抱いたのは、環境問題についてのテレビ番組を見たのがきっかけ。世界の人口は現在の約76億人から約30年後には100億人に達するとされる。それに伴って森林伐採や生態系の破壊が進み、世界は食糧危機に陥る恐れが指摘されている。その解決策として昆虫食が提唱されていると知ってラッパーの血が騒いだ。
「これは世に訴えなければ」。いずれ食糧危機が訪れるかもしれないのに、国内では毎年3000万トン近くが食べ残しなどで廃棄されている。「飽食ニッポン」に警鐘を鳴らすために思いついたのが、食用昆虫の自動販売機の設置だった。
昆虫は栄養価が高く、養殖するのに牛や豚ほど土地や飼料を必要としないため環境への影響も少ない。国内でも流通しており、友田さんは業者からあらゆる昆虫を仕入れて自動販売機で提供している。話題を聞きつけて県外から買いに来る“物好き”もいて売り切れる昆虫もあるという。
実は友田さんは大の虫嫌い。見るのも嫌でゴキブリが出た時などは妻に頼りきりだが、売る前には自分でも食べてみたという。「うまかった。乾燥コオロギは干しエビのような……」。食糧問題をテーマにかつてのラップではなく昆虫販売で世の中に問題提起する。【中里顕】
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