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東京ドームで販売するサントリービールの売り子たち

2018年08月01日

球場「ビール売り子」たちの可憐でアツい戦い

球場「ビール売り子」たちの可憐でアツい戦い
7/31(火) 6:00配信



東京ドームで販売するサントリービールの売り子たち(筆者撮影)

 野球場で飲むビールはなぜ、こんなに美味いのか。それは長年の謎だった。

 筆者は最近、プレスパスをもらって球場に入る機会が増えたが、お金を払ってお客さんとして球場に行く方が断然好きだ。プレスパスをぶら下げてはビールが飲めないからだ。今記事と次回、2回にわたって「野球場のビールはなぜ美味いのか」を考える。

【写真集】これがサントリーの売り子たちの素顔だ

 午後4時。東京ドームのバックヤードには、華やかなユニフォームを身にまとった女性たちが集まっていた。


 彼女たちは鏡に向かって手際よくメイクを整えると、次々とバックヤードの通路に腰を下ろした。サントリー製品の売り子たちだ。

 仲間と明るく笑顔で話すさまは華やかではあるが、どことなく緊張感も漂っている。

 「みなさん、お疲れ様です!」

 担当者の話が始まると、彼女たちが一斉に顔を上げた。花が咲いたようだ。

 「今日はソフトバンクさんの主催試合です。4万5千人、ほぼ満員が見込まれています。お客様が多いので、階段の上り下りなど十分に注意してください。また、観戦障害にならないよう、販売のときにも注意してください。本日は団体のお客様も多いので、領収証の準備を忘れないように。ペンも用意してください」


 てきぱきとした指示があって、彼女たちは最後の準備に取りかかった。

■体力的にも、精神的にも生半可な気持ちでは務まらない

 「東京ドームの飲料の販売構成比は、店売り30%、売り子70%というところでしょうか。やはり飲食販売の花形はビールです。客席での販売は、お客様との距離も近いので、お客様と売り子さんの『安心と安全』には細心の注意を払っています」と株式会社東京ドーム飲食&物販部の販売担当者は話す。



 給料は固定給+歩合制です。売り子の実働時間は3時間程度ですが、売る子は一晩で300杯くらい売りますから、フルタイムのバイトより収入はいいのではないでしょうか。

 サントリーでは、毎年ビールの売り子を募集しますが、1000人くらいの応募があります。その中から20~30人が最終的に採用されます」

 と、サントリーコーポレートビジネス株式会社 開発営業部の小澤憲司専任部長は話す。東京ドームのサントリーの売り子の窓口だ。


 サントリーさんのご厚意で、売り子の女性にも話を聞くことができた。

 4年目の高尾さんは、三塁側内野席を担当。大学を卒業し、事務所に所属し芸能活動もしながら売り子をしている。

 「岡山出身です。大学2年から売り子のバイトをしています。野球は興味なかったのですが、お父さんに野球を見に連れて行ってもらって、売り子はかっこいいと思いました。

 この仕事のいいところは、自分が頑張った分だけ形にあらわれることですね。売った杯数がはっきり出ます。年間表彰などもあるので、励みになります。顧客さん(常連客)とコミュニケーションをとるのが楽しいですね」


 海津さんは一塁のバックネット裏担当。大学在学中で売り子2年目だ。

 「新潟から上京して、この仕事を知りました。それまで東京ドームは行ったことも見たこともありませんでした。

 でも大学の近くだったので、応募しました。売り子ってなんだかキラキラした仕事だなぁ、と思いました。

 新潟では新体操をしていました。売り子とは全然違いますが、華やかな裏で、すごいつらい部分がある点は似ていると思います」

 湯本さんは右翼の外野席担当。短大2年生で彼女も2年目だ。


 「実家は埼玉ですが、学校が渋谷にあって通勤もしやすかったので、このアルバイトを選びました。売り子の仕事は、結果が数字で見えるのがいいですね」

■重いタンクを背負って彼女たちは大丈夫? 

 筆者たち取材陣は、通用口から通路を通ってバックヤードに案内されたが、東京ドームの外周を半分以上歩いた。かなりの距離だった。

 彼女たちは、10リットルのビールが入った重いタンクを背負ってバックヤードと持ち場の観客席を何往復もするのだ。大丈夫なのだろうか?



 「最初は、持ち場に行くまでに疲れていました。次の日は、足腰が本当に動かなくなりました。やばかったです。もちろん、ふくらはぎは成長します(笑)。(野球の試合が)6連戦になると、4年目でも足が太くなる気がします」(高尾さん)

 ビールの売り子出身のタレントが話題になってから、売り出すきっかけにしたいと芸能事務所から自社タレントの売り込みもあるという。

 しかし、そういう女性は、ほとんどが続かない。

 また、一般採用の女性でも、1日で辞めてしまう人がいる。体力的にも、精神的にも生半可な気持ちでは務まらないのだ。


 東京ドームではビールメーカー4社(サントリー・アサヒ・キリン・サッポロ)が参入し、ビールなど飲料の販売を競っている。

 東京ドーム側は、4社の売り子の数を同一にし、イーブンな条件で販売競争ができるようにしている。

 そういう競争環境で、売り子と言う”花形プレイヤー”が日々売り上げを競っているのだ。

 売り子たちを仕切っているのが場内チェッカーと呼ばれる裏方だ。

 場内チェッカーは、出勤してくる売り子を、体調や勤務態度などでビール、チューハイ、角ハイと各飲料に振り分けていく。通常、新人はハイボールやウィスキーで経験を積んで、結果を出せばビールに回していく。


 また基地で売り子のタンクの詰め替えをする基地チェッカーもいる。

■ビールと他の飲料では売り方が異なる

 「ビールは最初が勝負です。お客様が入場された瞬間から、勝負は始まっています。こちらから手を上げて、ビールが飲みたそうなお客様を見つけては、すかさず売っていきます。

 ハイボールは、前に氷を積んでいるのでビールより重いです。それに、ほとんどのお客様はまずはビールを飲まれますから、しばらくは売れません。


 その間、本当につらいですが、ひたすら動き回って自分の顔を売るんです。ここにいますよ、とアピールします。

 一方でビールは途中で売れなくなります。でも、そこから差が出るんです。

 売れなくても笑顔で客席をまわって顔を売って、コミュニケーションをとることが、その後の売り上げにつながっていきます」(高尾さん)

 2年目の湯本さんも、「ビールを飲みたいお客様は、きょろきょろと売り子を見ています。それを見つけて、誰よりも私と目が合うように見つめるんです。目が合ったら遠くてもそこまで行きます」と話す。


 ビールの販売競争で重要なのは、他のメーカーのブランドを飲んでいる人に、2杯目、3杯目に自社のビールを飲んでもらうことだ。サントリーでいえば、他社のビールを飲んでいるお客さんに、ザ・プレミアム・モルツを飲んでもらう必要がある。

 「他社のビールを飲んでいるお客様にビールがなくなりそうなタイミングで、ザ・プレミアム・モルツいかがですか? と勧めます。お客様の表情を見定めないとクレームになりますから注意が必要ですが、いけそうだな、と思ったら思い切ってお勧めします。”じゃ、もらおうか”と言ってもらったらすごくうれしいですね」(高尾さん)


 彼女たちは揃いのユニフォームを着ているが、キャップにはそれぞれ異なる花飾りをつけている。覚えてもらうためだ。

 うまくいけば、初めてビールを買ってくれたお客さんが次には「顧客さん」になる。彼女たちは、コスチュームと、笑顔と、コミュニケーションで、いかに覚えてもらうか、も競っているのだ。

 売り子の責任者である前述のサントリーの小澤専任部長は、「ビールの売り子と言えば、ちゃらちゃらした世界だと思われがちですが、彼女たちは、体力的にも、精神的にもすごい仕事をしています。悔しかったら泣くし、ライバルに勝つために真剣にやっている。華やかさだけではないですね。この仕事をやり通せたら、どこの会社でも務まりますよ」


 高尾さんは、「やはり普通のバイトでは味わえない達成感、やりがいがあります。もともと芸能の仕事がしたかったのですが、このバイトをして周りが見えるようになりました」と笑顔で話す。

 「2年生なので、就活はまだです。明確な目標はありませんが、この仕事で学んだことを活かせる仕事がしたい」(海津さん)

 「内定をいただきました。ビールの売り子を2年やっていました、というと、面接官の方々の態度が変わりました。

 自分の学生生活で一番大きかったのは、売り子の経験です」(湯本さん)


 「缶ビールなら250円も出せば買えるじゃない、それをカップ1杯800円も出すなんて!」筆者は常々、妻からそう言われるが、この価格には彼女たちの「気持ち」も含まれているのだ。

 おじさんは、球場で漫然とビールを飲むのではなく、カップに注いでもらう瞬間から、もう少し心して飲むべきかもしれない。

■いざ、出陣! 

 東京ドームの各ゲートが開くと、お客さんが続々と詰めかける。

 午後5時にはバックヤードの入り口に4社の売り子が整列する。4社は、同じタイミングで販売をスタートするのだ。こうしたマネジメントは、4社の担当者が1年ごとに持ち回りで行う。


 「行ってらっしゃい」の声がかかると、売り子たちが満面の笑顔とともに隊列を組んで通路へと出ていく。

 「出陣」だ。

 これと同時にバックヤードの奥にある「基地」では、基地チェッカーたちがステンレスの台の前に待機する。10リットルのタンクは、カップにして24杯。

 入場直後の観客は「まずはビール」を求め、売り子の姿を求めて場内を見回す。次々とビールが売れていく。スタートダッシュがかかる。

 10分足らずで、売り子の1人が戻ってきた。彼女は後ろ向きになり、タンクをステンレス台に載せた。基地チェッカーがタンクのカバーを開けて新しいタンクと詰め替える。この間に、場内チェッカーが売り子にドリンクを渡す。


 ドリンクを口にする売り子に「今、何分ペースだよ(同じポジションのライバル会社の)○○ちゃんは何分前に帰ったよ」などと細かく情報を入れる。

 わずか十数秒で詰め替えを終えた売り子たちは、また長い通路を歩いて売り場へと戻っていく。F1のピットもかくや、と思わせる慌ただしさだ。

 基地の壁面には大型のモニターが設置されている。

 ここには4社のビールや他の飲料の販売数量が刻々と掲示される。売り子たちの販売情報が、手元の端末を通してオンタイムで伝えられるのだ。


■裏側で展開されるもう1つの”ペナントレース”

 ビールは「出陣」と同時に100杯単位で数字が伸びていく。

 そんな中を次々と売り子たちがカラになったタンクを背負って基地に帰ってきて、あっという間に満タンのタンクを背負って戻っていく。

 彼女たちの額には汗が光っている。

 「サントリーでは、ビールメーカー単位の販売競争とともに、売り子の販売数も競っています。東京ドームの巨人戦、そしてソフトバンクなど他の球団の主催試合の数字もトータルで、年間の杯数を競います。年間販売数の上位は表彰をして、特別賞を出しています」と、小澤専任部長は語った。


 プロ野球選手たちが華々しく活躍するスタジアムのスタンドでは、もう1つの”ペナントレース”が繰り広げられているのだ。


広尾 晃 :ライター










引用元の記事はこちら(https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180731-00230607-toyo-bus_all)


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