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人には言えない「本当に美味しいラーメン」

2017年08月10日

人には言えない「本当に美味しいラーメン」を見つける方法

美味しいラーメンに辿り着くのが難しい時代

 ラーメン人気はブームを超えて日常になっている。毎日のように新しいラーメン店がオープンし、SNSで情報が拡散されて行列を作る。テレビや雑誌などのメディアでも話題や人気のラーメン店を取り上げる。90年代後半から2000年代初頭の「ラーメンバブル」的な盛り上がりは落ち着いた感があるが、それでも外食におけるラーメンの注目度や人気度はいまだに高いものがある。

 私がラーメン食べ歩きを始めた20年前と比べると、当たり前だが今の方が圧倒的にラーメン情報が多い。大げさではなく毎日のように新しくオープンする店の情報が飛び込んで来て、同じく毎日のように閉店の知らせも届く。スマートフォンで検索すれば近くにあるお店の情報が一瞬で入手出来る。ラーメン本を片手に載っているお店を一軒一軒潰すように食べ歩いたあの頃は、今から思えば随分とのんびりとしていたとも思う。

 美味しい不味いは主観的で危うい価値基準ではあるが、昔と比べると美味しいラーメンは格段に増えている。ただ、一昔前ならどこも行列店になるだろうというクオリティのラーメンでも、今の時代では当たり前の目立たぬ一杯でしかない。誰もが素早くラーメン情報にリーチ出来る今だからこそ、その膨大な量の情報を精査するスキルが必要になってくる。そういう意味では本当に美味しいラーメンに辿り着くのが難しい時代になった。
テレビや雑誌は「新店」に集中する

昔に比べると新店のレベルも格段に上がっている。不味いラーメン店は激減した。

 美味しいラーメン店を見つけるには、それこそテレビや雑誌などのラーメン特集を参考にすればいい、と思う方も多いだろう。しかしメディアのラーメン特集では辿り着けないラーメンもたくさんある。私もラーメン評論家という仕事柄、様々なメディアでラーメン特集を手掛けることが多いが、その場合は何かしらの「テーマ」「縛り」のもとに店選びをすることがほとんどだ。

 メディアのラーメン特集では「2017年にオープンした新店」や「味噌ラーメンの人気店」、あるいは「チャーシューが豪華な店」など、紹介するラーメン店を一括りにする「テーマ」が必ず置かれる。限られた時間やスペースで紹介出来る店の数は決まっているのだから、メディアがテーマを設定するのは当然のことだ。その場合、美味しいというある意味主観的で抽象的なフィルターよりも、分かりやすいテーマで紹介する方が視聴者や読者に伝わりやすく、店も選びやすいのは言うまでもない。

 中でも「ニューオープン」というテーマは、いつの時代でも必ず扱われる鉄板ネタだ。ラーメン本や特集などを見ても、まず最初に「今年オープンの新店」が大きく紹介されることがほとんどだろう。まだオープンして数ヶ月しか経っていない、経験も技術も浅いラーメン店が大々的に取り上げられ、長年行列を作る人気店や何代も続く老舗店などの扱いは小さいか、場合によっては取り上げられもしない歪みは、ある意味避けることの出来ないメディア特有の構造的欠陥と言えなくもない。
今食べるべきラーメン店の条件とは

今年湯島から秋葉原に移転した「大喜」は、1999年に創業した。

 玉石混淆、群雄割拠のラーメン界の中で、メディアに頼ることなく、今食べるべきラーメンに辿り着くにはどうしたら良いか。本当に美味しいラーメンを食べるにはどういう店に行けばいいのだろうか。

 メディアが辿り着けないであろう、私が考える「今食べるべきラーメン店」とは、「創業10年から20年の中堅店」「オープン当初から人気店で今も人気を保っている」「基本的なラーメンの設計を変えていない」「原則として店主が店に立ち、チェーン展開をしていない」などの条件を満たしている店だ。もちろんこれらの条件を満たしていなくとも、美味しいラーメンを提供する店はたくさんあるが、美味しいラーメンの見つけ方の一つとして、参考にして頂けたらと思っている。

 まず「創業10年から20年の中堅店」について。経験を重ねていけばいくほど、作り手の技術も成熟してラーメンは安定して美味しくなっていく。新しくオープンした店は今の技術や素材を武器に、最先端のラーメンを提供している店が多いことは確かだが、そのラーメンの完成度はまだまだこれから上がっていく段階だ。また暖簾を何代にもわたり受け継いでいる老舗の場合は、その歴史の中で一定の固定客を掴み万全の状態になっていることが多く、良くも悪くも変化のない味を出し続けているケースも少なくない。

 しかし、創業して10年から20年程度の店の場合は、作り手がちょうど脂の乗った時期でもあり、ラーメン作りの知識や技術もオープン時よりはるかに成熟している。そのラーメンの完成度が新店よりも高いのは言うまでもないだろう。さらにまだまだ一定の危機感と緊張感を持ちながら、味を変えずとも飽きられないようにと努力をしている店が多い印象を受ける。

2002年、「渡なべ」が創業したことにより、現在も続く豚骨魚介ブームが興った。

 次に「オープン当初から人気店で今も人気を保っている」という条件。創業して10年から20年の店だと、ちょうどラーメンバブルが始まった1997年頃から、大分落ち着いて来た2006年頃のオープンということになるが、ちょうどその頃は注目を集めるラーメン店が今以上に続々とオープンしていた、いわば「ラーメン戦国時代」である。そんなライバルも多く過酷な時期にオープンして、その中で注目を集めて人気店になったというのは並大抵のことではない。そしてその後も、常に問題意識をもってラーメン作りに取り組みその味を磨き続けていなければ、長い間人気を保ち続けることは難しい。

 「基本的なラーメンの設計を変えていない」について。長い間営業している店でも、ラーメンの設計を一から変えてしまう店が少なくない。もちろんそういうラーメンもそれまでの技術や経験が生かされているとは思うが、やはり同じ味を長い間作り続けることによって磨かれたラーメンの方が、さらに完成度が高まっているのではないかと思うのだ。さらに10年も20年も変わらぬ味を出し続けられるということは、その商品設計が普遍的であり、多くの人の支持を受け続けているということの証左でもある。

1999年、中目黒に創業した「八雲」。今年池尻大橋に新たな店を構えた。

 「原則として店主が店に立ち、チェーン展開をしていない」。ラーメンは作り手の数だけ味がある食べ物だ。一杯のラーメンを作るには多くの苦労があり、丼の中に入っているものについてはすべて存在理由がある。ラーメンという食べ物は、やはりそのラーメンを考えた人間が作った一杯が一番美味しいはずだ。人気店になって支店を展開するようになると、物理的に店主が店に立てなくなる。もちろんその思いを十二分に汲んだスタッフが、確かな技術のもとに美味しいラーメンを作ることは出来るだろう。しかし、やはり店主が作る一杯とスタッフが作る一杯では、その責任の度合いや思い入れの度合いには違いが出ると思うのだ。
十年という年月がラーメンを深化させる

2001年創業の「麺の房砦」(神泉)は、一風堂出身者の嚆矢。

 これらの条件を満たすラーメン店をあらためて食べ歩いてみると、そのラーメンが確実に美味しくなっていることを体感する。見た目は以前食べたものとほとんど変わりはないのだが、一口食べるとその違いは歴然だ。長い年月の間に、素材そのものが良くなっていたり、製法が新しくなっていたり、作り手の技術が向上したり、様々な要因によって一杯のラーメンが奥深くなっているのだ。

 同時にその十年という年月によって、食べ手である自分の変化も感じられるだろう。味覚や嗜好の変化はもちろんのこと、スープを飲む時や麺を啜る時の感覚、さらにはラーメンに対する意識や向き合い方も昔とは違うはずだ。作り手が十年の時間を重ねてきたように、私たち食べ手も同じく十年の時間を経てきている。十年前、二十年前に感動したラーメンとまた向き合い、その美味しさを感じられるというのは、ラーメン好き冥利に尽きる。

 SNS時代になって、情報のスピードは加速度的に速くなり、そのボリュームも倍々に増えている。その情報の渦に巻き込まれながら、これからも私はラーメン評論家として新しくオープンした話題の店を追いかけ、メディアで紹介していくのだろう。しかし、仕事を離れて「一ラーメン好き」に戻った瞬間に私が食べたいラーメンは、時代のトレンドをキャッチした話題のラーメンではなく、十年選手や二十年選手たちが弛まずに作り続けてきた愚直なラーメンたちなのだ。





引用元の記事はこちら(https://news.yahoo.co.jp/byline/ymjrky/20170809-00074298/)


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