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鮮やかな色が目に楽しいメダカたち

2018年10月07日

メダカ1匹1万円 ブームに弊害

今や“泳ぐ宝石”…過熱するメダカブームのウラ
10/6(土) 7:07配信



 観賞用に改良されたカラフルなメダカが、ここ最近ブームになっている。熱帯魚などよりも飼うのが簡単で、素人でも繁殖を楽しめることなどが背景にある。珍しい特徴を持つものは高値で取引され、一獲千金を夢見る“にわかブリーダー”が増えているという。しかし、その過熱ぶりは、犯罪や野生のメダカの生息環境を危険にさらすなどの弊害も招いている。


メダカの繁殖や飼育について語る青木さん
◆1匹1万円も!高級メダカに買い手殺到

 東京郊外のJR八王子駅南口にあるビルの5階。エレベーターから降りると、ライトアップされた水槽が並ぶ光景が目に飛び込んできた。メダカの飼育方法などを紹介するインターネットサイト「めだかやドットコム」の運営者、青木崇浩さん(42)が経営するメダカ専門の販売店だ。

 水槽の中をヒラヒラと泳いでいるのは、熱帯魚と見間違えそうなほど色鮮やかなメダカたち。体長は3~4センチほど。錦鯉(ごい)のようにカラフルな柄もいれば、きらきらと光を反射しながらゆったりと動く「ラメ入り」もいる。

 「今年は『ブラックダイヤ』などラメ入りのメダカが流行(はや)り。育てて展示するとすぐに売れてしまい、常に品薄の状態です」。カラの水槽を示しながら、青木さんが説明してくれた。ここ数年は、観賞用のメダカの改良が盛んになっていて、毎年のように新しいタイプのメダカが現れ、物珍しさから購入希望が殺到する状況だという。店で扱うメダカは、1匹が数千円から1万円ほど。高額なものは「高級メダカ」と呼ばれるようになった。


鮮やかな色が目に楽しいメダカたち(青木さん提供)
◆歴史が浅い、だから新しいものを作れる

 青木さんはサイトなどを通じて、メダカに関する情報発信を長年続けてきた。詳しく調べるようになったきっかけは、大学生の頃に飼ったヒメダカだった。ヒ(緋)メダカと聞くと、オレンジ色を想像しそうだが、間近で眺めているうちに、体の色には濃淡があり、薄い黄色から赤に近い濃いオレンジ色まで、個体によって全く違うことに気付いた。

 「ならば、どんな色でも表現できるのでは」と思い、白いメダカなどと掛け合わせてみた。変わったメダカがいると聞けば見学に行き、繁殖だけでなく飼育方法なども研究したという。「(観賞用の)メダカの改良の歴史はここ十数年。金魚などと違って、すごく浅い。だからこそ、誰にでも新しいものを作り出すチャンスがある。それが人気の一因かもしれません」


◆投機目的の動きも…過熱する繁殖ブーム

 メダカの繁殖は、金魚などに比べれば、素人でも容易に行うことができるという。産卵に適した期間が長く、特別な設備も必要としないためだ。春から夏の終わり頃までの暖かい時期に、オスとメスを同じ水槽で飼い、カップルが成立すれば、メスは受精した卵を水草などにほぼ毎日産みつける。卵を放っておくと親メダカが食べてしまうので、卵が産み付けられた水草ごと隔離する。10日から2週間ほどで孵化(ふか)するそうだ。

 日本にもともといたメダカは「キタノメダカ」と「ミナミメダカ」の2種類。親となるメダカの外見や組み合わせにより、ユニークな特徴を持ったメダカが生まれてくることがあるが、この時点では単なる偶然の産物に過ぎない。しかし、人為的に時間をかけて同じ特徴を持つものを選別して交配させ、その特徴が安定して次の世代にも引き継がれるようにすれば、愛好家などの間で「新品種」として認められる。変わった体形やラメ入り、真っ黒など様々な特徴を持つものがこれまでに生み出され、「パンダメダカ」「楊貴妃メダカ」「幹之(みゆき)メダカ」などと呼ばれるものもある。


ダルマメダカ(青木さん提供)。背骨が癒着したことで体が丸くなり、ミニチュアの金魚のように見える

 次世代以降も安定して同じような姿のメダカが生まれてくる確率を「固定率」というが、珍しい種類ほど固定率は低く、希少性が高くなる。例えば、ずんぐりむっくりとした体形や泳ぎ方の愛らしさから人気の「ダルマメダカ」の固定率は、「ダルマ同士を掛け合わせても30%ほど」(青木さん)にすぎないという。

 それだけに、メダカ業者や愛好家たちが時間と労力をかけて生み出した種類の価格は高くなる。青木さんは「メダカの改良には、一獲千金の夢が見られるところがある」と認める一方で、「最近は、『高い値段で売れる』という部分ばかりが注目されて投機目的のような動きも出ている。あまり好ましいとは言えません」と表情を曇らせた。

◆72万円相当、盗まれた「ブラックダイヤ」

 童謡「めだかの学校」にうたわれるように、日本中の川や池などに生息し、ごく身近な生き物として親しまれてきたメダカたち。野生種は近年、絶滅危惧種にリストアップされて世間を驚かせたが、ヒメダカやクロメダカといった一般的な種類はペットショップなどで売られていて、1匹数十円ほどと安価だ。安く入手できることから肉食魚類のエサにされたり、実験動物として利用されたりしてきた。

 ペットとして飼う人が増えたのは、ここ数年のことだ。一般社団法人・ペットフード協会の調査によると、過去10年間にメダカを飼った経験がある人の割合は2013年には3.9%だったが、16年には6%に上昇した。これは熱帯魚(3.8%)や小鳥(3.6%)などを上回る数字だ。

 大がかりな飼育設備が要らず、小さなスペースで事足りるため、マンションなどでも飼う人が増えているとみられる。人気の高まりに伴い、ホームセンターなどに「メダカコーナー」が設けられるなど、観賞魚としてのメダカの注目度は高まっている。

 だが、過熱するブームは弊害も巻き起こしている。今年6月、愛媛県松山市のメダカ販売店で「ブラックダイヤ」と呼ばれるメダカ48匹(72万円相当)が盗まれる事件があった。実は、青木さんも群馬県に店舗を構えていた14年、2度も盗難の被害に遭っている。犯人は夜中にビニールハウスを刃物で破って侵入し、品種改良中だったメダカを盗んでいった。現在の店舗をビルの5階にしたのは盗難防止対策のためでもあるという。


◆「人と違うものを…」欲が巻き起こした弊害

 価格の高騰も目につく。あるインターネットオークションサイトには、3000件近いメダカの出品があり、数千円~数万円の入札価格が並ぶ。中には「1ペア50万円」という高額なものも。青木さんは「新しいものを作り出す労力を思えば数万円という価格はうなずけるが、『他の人とは違う変わったものが欲しい』という欲や珍しさが先行すると、思っていたのとは違うメダカを高額な価格でつかまされることがある」と注意を促す。

 ネットオークションでは、メダカの写真とともに「この親から生まれました」といった説明付きで卵を販売するケースがある。しかし、ダルマメダカを例に挙げたように、珍しい種類は固定率が低いことが多く、そういった親から生まれた卵が孵化して親と同じ姿形になる確率は決して高くない。また、オークションサイトに掲載されている写真は、色などを調整している可能性も考えられ、落札した商品が届いてみると想定と全然違ったということにもなりかねない。

 メダカの寿命は2年ほどで、伝統的な観賞魚である金魚や錦鯉に比べれば短い。青木さんは「種類の珍しさや価格が注目されがちだが、生き物を扱っているということを忘れてはいけない。きちんとした飼育知識があれば誕生から繁殖まで見ることができるのがメダカ。楽しく健全に飼育してほしい」と話している。

◆絶滅の危機にある野生のメダカ

 健全な飼育――。それは水槽の外の世界にとっても重要な意味を持つ。飼えなくなったメダカを安易に川や池などに放す行為が、生態系に深刻な影響を与えるおそれがあるのだ。

 国は1999年、野生のメダカを「絶滅危惧種」に指定した。英語でricefishと表記されるように、田んぼのまわりで見られる魚として親しまれてきたメダカだが、都市開発などの影響で生息に適した場所が激減したうえに、生息地が競合する外来生物が持ち込まれたことで生存が危ぶまれる事態となった。今年、公表された最新の環境省のレッドリストでも、野生種は「絶滅の危険が増している」とされている。

 先述したとおり、近年の研究で日本のメダカの仲間は2種類に分けられた。東北から北陸にかけての日本海側に分布する「


◆生態系を脅かす「交雑」

 例えば、東京・江戸川区の葛西臨海水族園が保全を進める「東京めだか」は、ミナミメダカのうち、(1)都内に生息 (2)関東地方特有の遺伝子を持つ (3)ヒメダカの遺伝子を持たない (4)他地域からの移動の記録や痕跡がない――という四つの条件を満たすものを指す。現在、「東京めだか」と考えられているミナミメダカの個体群は4系統あり、保全のための飼育が続けられているが、いずれも葛西臨海水族園などによる人工飼育だ。

 都内の川や池などの水辺にも、メダカが生息していることは調査でわかっている。ただ、それらのメダカの遺伝子を解析すると、関西や九州などのメダカに特有の遺伝子が見つかり、他地域のメダカとの交雑が進んでいる実態が明らかになった。東京在来の遺伝子型であっても、品種改良され観賞用として普及しているヒメダカの遺伝子を持つものも多い。こうした交配による「遺伝的攪乱(かくらん)」が、野生のメダカを保全する上で非常に問題になっている。


水族園内に展示されている「東京めだか」の水槽の前で保全活動について説明する多田さん
◆地域が育む野生メダカの性質

 葛西臨海水族園でメダカの飼育展示係を務める多田諭さん(57)によると、メダカが持つ地域ごとの特徴は、長い歴史の中でその地域の環境に順応してきた証しでもあり、地域固有の遺伝子型はいわばメダカたちの「履歴書」だ。他地域のメダカと交雑させてしまう行為は、「この『履歴書』をないがしろにするだけでなく、生息そのものを困難にする事態にもつながりかねない」と多田さんは言う。

 北方に分布するメダカは、南方のメダカよりも一般に成長が早いという性質を持つ。これは春が遅く、冬が早い環境に適応し、早く大きくなって体力を蓄えて冬を越すためだ。異なる地域のメダカと交配し、この性質がなくなってしまえば、その地域の気温に対応できず、絶滅する可能性も出てくる。

 観賞する分には美しく映るヒメダカの色も、自然環境では目立ちすぎて捕食されやすくなる。遺伝的攪乱が野生のメダカに与える影響は計り知れないのだ。多田さんは「他地域のメダカや品種改良されたメダカを放流するのは、たとえ善意であっても、その地域の野生のメダカに悪い影響を与えかねないのです」と警告する。


◆いつかは里帰りを

 生粋の江戸っ子とも言える「東京めだか」は、今も都内のどこかの水辺でひっそりと生き続けているのだろうか。多田さんは、年間数件寄せられる情報などを基に調査に向かうが、あまり期待を持たずに出かけるという。「自然の中にもまだいると信じたいが、可能性はかなり低い」と知っているからだ。2006年から始まった都内のメダカの生息地調査は今年で計35か所に及ぶが、メダカが見つかっても「江戸っ子」ではないと判明することが繰り返されてきた。

 現在、葛西臨海水族園などで飼育が続く「東京めだか」は、現状では自然に戻すのは難しい。ただ、地域のメダカは元々の生息地にいることが本来の姿。多田さんは、「里帰りさせてあげたいという気持ちはずっとある」と話す。

 とはいえ、その願いが実現したとしても、「東京めだか」が自然の中で泳ぐ姿を私たちが見ることは難しそうだ。他の地域のメダカが移入してしまう可能性や、人間によって捕獲されてしまう危険性を考えれば、里帰りする水辺は人間の出入りが制限されるような場所となりそうだからだ。

 飼育や繁殖の面白さを教えてくれるメダカだが、飼うなら目の前の水槽の中だけでなく、自然の中の生き物にも思いを巡らせて「最後まで面倒を見る」という当たり前の覚悟が必要ではないだろうか。





引用元の記事はこちら(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181006-00010000-yomonline-life)


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